自分の家が返ってきた喜び

父親の仕事の都合で、国内のさまざまな場所に住んだことがあります。子供時代の多くの時間を、会社から提供された社宅で過ごしたわけですが、子供ながらに他人の持ち物という印象を持って生活していたため、「家」そのものへの愛着が一切ありませんでした。

そうした中でも、両親が定年後に住みたいと購入したマンションに3年程住んでいました。その時はほとんど意識しませんでしたが、今となってはこのマンションがとても特別な場所なのです。

転勤のためそのマンションを離れ、他人に貸し出されたことを知るとなんとなく寂しい気持ちになり、大袈裟かもしれませんが帰る場所がなくなってしまったような気になったのです。

20年程経ち、今はそのマンションに定年した父親と母親が住んでいます。街の雰囲気や他の部屋の住民はすっかりと変わってしまいましたが、家や部屋は住んでいた時の雰囲気をそのまま残していて、なぜかホッとします。自分の家が家族のもとへ返ってきたという喜びがあり、友人に会いに行くために実家に帰るのではなく、そのマンション「家」に帰るようになりました。すっかり荷物置き場になった自分の部屋は、とても懐かしく感じています。

帰る家があるというのは、心の拠り所です。私の家は、この「家」なんだなと、その想いは強くなっています。